『教育研究費』のこと

雇用融解―これが新しい「日本型雇用」なのか
新自由主義あるいは格差社会は大学という場にも確実に押し寄せてきており*1,先日も以下のような切実な記事が出ていた。


先端的な研究をしている研究室は私から見れば天文学的な額の研究費を使いこなしていて,目に見える成果と後進の育成が課せられている。またそのノルマから派生する面もある論文捏造や公的研究費の不正使用の問題があとを絶たない。
多くの場合,冒頭の記事のように所属する大学の研究費では足りず,文部科学省の科学研究費(科研費)や企業との共同研究費などを確保するのが研究者としての腕の見せ所である。
私の場合,今年度の研究費は消耗品費+備品費で約27万円,旅費は約6万円であり*2,コピー代など消耗品費は大事に使ってゼミ生用のPCを1台導入*3するのがこ数年の使途である。
科研費については前任地から短大に移ってきたころに採択されて,以前の機器が使えなくなったデメリットをどうにかカバーすることができた。なお,国立情報学研究所(NII)の,

を使えば,論文・著書などと並んで過去の科研費取得状況も確認できる*4


GeNiiによる“本間善夫”検索結果(同姓同名の方の結果を含む)

さて,“共同研究費”については以下のような発想もある。

つまり本を執筆して出版し,印税を得ることが研究費確保につながり,出版社という企業との産学連携活動であるということである。もちろん大学での教育研究成果を社会に向けて情報公開するという意味でも大きな意味がある。
私の場合もこの手法で教育研究費を確保している面があり,新しいWebコンテンツ作成や本を書くために必要な書籍代*5,Webコンテンツ動作確認や学生の指導のために欠かせない最新OSのPC機,私設Webサイトの維持費(内輪話で言えば,現在のサーバの利用料は契約容量550MBで月額4,725円である),不足の旅費(学会やボランティア的活動;ecochemの足跡参照)などはこれに頼っている状況である。一昨年は学会発表や講演資料作成に不可欠なA3判カラープリンタ導入(別ブログ記事参照),昨年はノートPC*6と分子計算ソフト*7の購入やサイエンスアゴラ参加などの費用にも充当することができた。


昨年購入した分子計算ソフトのパッケージ

このような収入は費目が限定されずその時点で必要なものに使えるという大きなメリットがある一方,校正の時期になれば休日や休暇も返上しての作業が迫られ,当然ながら毎年の確定申告も必要となる*8
ただ,地方にいる私が編集者から本執筆のお話をいただいたり,高校教科書や参考書の執筆メンバーに誘ってもらっているというのも,学生の協力も得ながらWebで情報発信したり,以前のパソコン通信で専門会議室でいろいろな発言をしてきたお陰と考えており,その観点でも多くの方に利用あるいは支持をいただけるような内容をインターネット上に提示していくことは研究者にとって重要と考えている。
また,ネットでの情報発信は本ブログでも度々訴えている県内の大学が連携してお互いの魅力を高めて行く上でも不可欠で,それは出版社ならぬ地元新聞社が関与している以下の福岡の例などを見ても明白であり,新しい大学の器(うつわ)をイメージしながら教育研究費確保や説明責任という側面を論議しておく意味でも視野に入れておくことを望むものである。

*1:例えば別ブログ記事で取り上げた書籍「雇用融解―これが新しい「日本型雇用」なのか」参照。

*2:学科により異なる。また他に学科全体に配分される備品費や修繕費,図書館に推薦図書を入れる予算などがある。

*3:以前のものが次々と古くなって例えば現在3台あるWinsows Me機のサポートは終了してネットへ接続するのは避けた方がよいとされている。

*4:2007/04/11に書いたようにNIIに載っている情報の多くはGoogle検索でも引っかかるようになっている。

*5:2006/01/08にも記載。なお,ここに記した雑誌入手の問題は記事中にあるジュンク堂新潟店開店でほぼ解決している。

*6:その前に使っていたノートのHDが壊れて買い替えたが今年早々Vista機と交代

*7:現在のコンピュータ演習室ができた時に学生との演習用に数点購入してもらって以来ずっとバージョンアップしないままでいた。数年前に学会でポスター発表していた時にある研究者とその話になってずっと更新の必要性を感じていたもの。

*8:確定申告については,いつも参考にさせてもらっているブログの5号館のつぶやきにも先日ちょっとした記事が載っていた。なお,同ブログでは研究費問題も度々取り上げ多くのコメント等が寄せられている(Googleによる同ブログ“研究費”検索結果参照)