東大・小宮山総長の視点『大学を開く』

nicol052006-04-15

今日の朝日朝刊オピニオン欄。

  • 小宮山宏,私の視点『大学を開く 社会と連携,新たな知生む』(朝日,2006/04/15)

東大が提案し,京大・阪大・北大・茨城大が参加してこの4月から活動が始まった,

の話題を冒頭で紹介し,「自立分散協調系」と「知の構造化」が総長在任中のキーワードでもあるとしている。重視している分野は“環境”と“IT(情報技術)”であることも強調している。
2005/12/09に書いたように,小宮山先生の著書を以前から読んでいる身として,その発言には以前から注目しているが,上記「知の構造化」については,工学部長時代に,

というページを立ち上げ,“大学を開く”という理念で情報発信に取り組んでこられている姿勢の延長にあると考えている。
ところで,たまたま昨夜のNHKニュースで,東大も独立法人化したということで東京都から固定資産税を課せられる話題が取り上げられていた。以下は同番組に触れたブログ記事であるが,法人化も視野に入れている新潟県立大学(仮称)も見逃せない問題である。

コスト意識の重要性は2006/03/16に書いた,

でも言及されており,そこで示された国立大学87校の予算規模と,県立大学構想案に書かれている年間運営費を試みに並べてみると以下のようになる。


この中に広島大学が入っているが,数年前の同大学で開かれた学会に参加した際に昼休みに構内のベンチで,ある地方大学の先生(会う度に学生の資格や就職先などいろいろ情報交換している)と,キャンパスを見渡しながら,「こういう大学と勝負していかなければならないことになるのだ」という話をしたことを思い出す。
なお,大学の教員になる時に,恩師の一人から以下の本を読むことを薦められた。

  • OECD教育調査団 編著,深代惇郎 訳,「日本の教育政策」,朝日選書(1972)

p.69には,1969年度の国立大学75大学(当時)の全予算のうち,東大が10.3%,京大が6.1%を占めているというデータが掲載されており,このことは最初に読んで以来頭にこびりついている。もちろん額が大きければ責任はそれだけ大きいのだし,国立・公立は額は少なくともそれなりに税金が使われていること(法人化されたとしても)を忘れてはならない。ともあれ,コスト意識を持って社会における大学の存在の意味を考え続けなければならないことだけは確かである。