書籍出版数から全国展開を考える。

日本化学会の会員誌「化学と工業」2006年7月号の巻頭の論説,

の冒頭に,“日本だと大学用教科書は2,000 部も出たら版元の商売になる。部数が人口に比例するとして、520 万人のフィンランドなら80 部でしかない。80 部を刷る奇特な出版社は少ないため…”とある。
これを,全国と新潟県・東京都の人口をもとに考えてみた。

という数字を用いれば,全国均一に上記例の2,000冊売れたとして,東京は197冊,新潟は38冊である。大学の教科書は,著者自身の大学で大部分さばくことを考えれば学生数が多い大学か複数の大学で協力しなければ自前のテキストさえ出すことはできない(執筆者と出版社が赤字覚悟でやるなら別だけれど)。
あるいは大学向けに限定するだけでなく,一般向けにも売れる“商品”を出さなければならないし,そうなれば大学の宣伝にもなるだろう。
私自身,ネットという全国区の中でいろいろやってきたお陰で,いろいろな本の執筆に参加する機会にも恵まれ,高校生向けの教科書や参考書は別格としても発行部数1万部を超す本もあって*1,多くの読者の読まれる責任を感じるなどいい経験をさせてもらっている。また,ネット時代は居住地にかかわらずそのような機会は誰にでもあるという実践例とも考えている。
これは本に限らず,全国レベルのコシヒカリ(これは温暖化が進めばどうなるかわからないという兆候はすでに出てきているようだ)や世界を相手にしている燕・三条の洋食器などの例を考えても,常によりグローバルな情報発信(製品そのものも含めて)をしていかなければならないことを教えてくれるし,新大学もその道筋を示していく責務がある。
人口の問題は2006/04/02などでも触れているが,県で出している以下のグラフも眺めながら県立大学という存在を考えなければならない。その姿勢が学内外からネットという場にもより多く出現してくることを期待してやまない。


新潟県推計人口平成18年8月1日現在のグラフ

*1:価格1,000円の本が10,000部売れれば総売り上げは1千万円で,消費税だけでも50万円になり,社会的にもそれなりの貢献となる。