教授会で話題に出たSSHのこと

前回の教授会でSSHのことが話題に出て,担当部署で考えていることの一端を知ることができた。
SSHについては,私が参加している理科関係のMLでも時々話題に出て現場にも賛否両論がある。一方,協同する大学側としてはこれからの時代に必要とされる最先端の科学をやるという責任があるだろう。
たまたま5月に仙台で開かれたナノ学会第3回大会に参加したところ(学会員ではなかったが,発表件数を増やしたいとの勧誘メールが来たため),宮城県第一女子高等学校が特別講演に招待されていて聞いていたテーマはもちろんナノテク。


特別講演の聴講に来ていた宮城県第一女子高等学校の生徒さんたち


    ※パネルディスカッション「ナノテクと今後の我が国の産業育成」には,川添良幸 東北大金研教授,尾身幸次 元科学技術政策担当大臣(衆議院議員サイト参照),浅野史郎 宮城県知事(当時),黒川卓 日経ナノテクノロジー編集長が参加しており,知事がナノテクの運動靴を履いて紹介するなど楽しく有意義な企画であった。
上のページからも一部リンクしているが,SSHの資料例は次の通り。

SSHで取り上げるテーマは,例えば2009/12/09に書いた第3期科学技術基本計画や文部科学省の施策に沿ったものが求められるだろう。
そうするとバイオやナノテク,環境など何れも実験機器・分析機器が極めて高価なものが必要となり(ノーベル化学賞を受賞した島津製作所の田中耕一さんが開発しているのは数百万円以上のものがほとんど),運転資金のことも考えると,個人的にはつい実現の可能性に疑問符がついてしまう。
また,幼・保,小中高全体との関係が重要であるが(あるいは最近各地で開かれているサイエンスカフェなどの市民対象の催し等も念頭に入れたい),まずは高校というものを考えるならば,新しくなった理科の指導要領の内容・分野も研究しておく必要がある。この点は私自身,理科総合A(化学・物理分野)や化学IIの教科書や参考書の執筆に参加して意識させられるところである。
さらに,上掲の文部科学省SSHのページに,支援機関として独立行政法人科学技術振興機構JST)が挙がっているが,JSTで公開している理科教材も参考になるだろう(まだ一版には未公開であるが,ある教材についてはデータ提供の依頼を受けたことがある)。

同じく教授会に名前が出た新潟南高校のリンク集には,SSH関連で新潟大学工学部・理学部・農学部が掲載されている。これらの学部でやられている分野と同じものをやるのか差別化した別な分野をやるのかという発想も不可欠である。

なお,以上のような分野が重視されていることは現在の女子大学でも同様である。

自然科学分野に限らず,あまりお金をかけないで最先端のことができるような分野(かつ,県民に成果が還元でき学生の就職にも結び付きやすい分野)を見出していく必要があり,そのような意味でも多くの知恵と情報を集める必要があると考えている。

個人的には,実験室はできるかどうかわからないが(私の研究室の現有機器を使える分野やスペースがあるのかどうか…),コンピュータ室(センターは無理でも複数の演習室など)はできるだろうから,そちらに活路を見出して行きたいところ(計算科学,eラーニングなどコンテンツ作成,科学コミュニケーション;SSHならぬSTS,その他。因みに,ナノ学会で私が発表したのもナノテクの最新技術や問題点をもっとわかりやすくネットに提示していくべきではないかという提言であった)。そのためにも今からやっておかなければならないことは山積している。
北陸新幹線2010年問題で,新潟県(長岡以北など)への人や物の流れがどうなるか心配されていることもあり,全国から学生を集められる魅力ある大学が求められている。