新潟県立大学の売りは何なのか(追記あり)

久々のエントリーです。新大学については以下のような厳しい記事が先日掲載された。

    少子化に伴う「大学全入時代」が到来し、大学間の競争が激化。定員割れによって経営難に陥っている大学もある。そんななかで勝算はあるのか。そもそも県立大学ってどんな大学なのか”
経済危機もあり,新潟県の高等教育機関としての役割もさらに重くなっている中,新しい価値を生み出して行く姿勢とメッセージ発信が一層求められているのに,認可からかなり経つ今になっても相変わらずそれが見えにくいように感じているのは私ばかりではない。
一番強く伝わっているように感じられるのが「英語」というキーワードであり*1,その英語「も」活用してこれからの時代に必要とされる新しい芽となる分野を育てたり,それに関わっていく能力を学生に身につけてもらうために高校までに学んでおいてほしいこと(学校で学ぶ以外のことも含めて)などについてはメッセージが伝わっておらず,それが冒頭の記事の『県立大って』という語に象徴されているように思う。
現時点ではその説明責任が教員個々人に委ねられていることがこのブログを書き連ねている背景にあるのだけれど,私が期待するWebやICTの重要性を知っている学生という点では,それをすでに認識している受験生や関係者はここを見てくれているのだろうが(アクセス数が15万に迫ろうとしているし)そうでない人には伝わりにくいのが事実で歯がゆいところがある。
次に新聞記事に書かれている大学という存在の厳しさについては,以下のように最近多くの情報が出ていることを把握した上で今から対策を講じていくことも必要だろう。

大学の整備を進めた上で,入学前から求める学力をアナウンスする上でも欠かせないのが大学のアウトリーチである。
2008/11/16ほかで記したサイエンスアゴラでも,大学や研究機関のアウトリーチに関するプログラムや自分のやっている分野をおもしろく見せる工夫を数多く見ることができた。


プログラム例:「大学アウトリーチの可能性」より
UtoI(東京大学アウトリーチイニシアティブ)
サイエンスアゴラ2008「大学アウトリーチの可能性」報告(速報)(sumidatomohisa,2008/11/24)




ポスター展示例:「動き出した2つの輪:“科学者コミュニケーション”の未来図」
0to1(東京大学大学院理学系研究科有志 科学コミュニケーション活動グループ)

上の写真のように東京大学では学生・院生も巻き込んで全学的にアウトリーチに取り組んでいるおり,それに関係する組織がいくつもあるのは見習うべきだろう。
サイエンスアゴラは日本最大の科学のお祭りと言える存在になったようで,会場ではテレビに出演されている著名な研究者をはじめ多くの方のお話を聴けたり,直接話ができたりしたのは大きな収穫だった。これを是非新しい大学でも積極的に活かしていきたい。
最後に「英語」絡みでもう1件。下記別ブログエントリーに記したグローバル化を考えていく上で欠かせないキーワードの1つであるREACHについてである。この語くらいは国際関係の学部を目指す高校生は知っておいてほしいと思う*2


最近環境省から出されたREACH関連文書の日本語訳表紙




同文書の原典表紙

以下は上掲日本語訳から引用した一部である。この中には中学や高校で習った語もあれば大学で学ぶことになるかも知れない語もあるだろう。この例は科学分野のことであるけれど,大学で学ぶどの分野もこれまでに習ったことが基礎になっている。自分には関係ないと思わず,どの教科も興味を持って学んできて欲しいと強く思う。
    B.6.1 物理化学的性状
    物質の登録一式文書には、一般的な物理化学的性状の大半に関するデータが、低重量レベルにおいて既に含まれている(R.7章の関連部分へのリンクが以下のリストで提供されている)。
    年間1t以上の製造・輸入

    • 摂氏20度及び101.3kPaの状態での物質の状態
    • 融点/凝固点(R.7.1.2項目)
    • 沸点(R.7.1.3項目)
    • 相対密度(R.7.1.4項目)
    • 蒸気圧(R.7.1.5項目)
    • 表面張力(R.7.1.6項目)
    • 水溶性(R.7.1.7項目)
    • オクタノール・水分配係数(R.7.1.8項目)
    • 引火点(R.7.1.9項目)
    • 可燃性(R.7.1.10項目)
    • 爆発性(R.7.1.11項目)
    • 自己発火温度(R.7.1.12項目)
    • 酸化性質(R.7.1.13項目)
    • 粒度分布(R.7.1.14項目)


参考図:上記「オクタノール・水分配係数」に関連して
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*1:本ブログでも何回か言及しているが。

*2:私の最近の著書2冊でも取り上げている。